スポルティバのシューズの多くには、ヴィブラムのソールが採用されています。なぜヴィブラムなのでしょうか。それは、命の危険と常に隣り合わせにあるクライマーたちに絶大な支持を得ているから。スポルティバにとっても、そのシューズを履くユーザーにとっても、ヴィブラムは「信頼の証」だったのです。
−− スポルティバというシューズブランドから見て、ヴィブラムとはどんなメーカーですか?
長崎 ひとことで言えば「信頼の証」です。クライマーにとってシューズは命を預けるものであり、中途半端な素材は使えません。スポルティバだけではなく多くのシューズブランドが、歴史ある、優れたヴィブラムのソールを使うのは当然のことだと思います。
佐藤 私は、2022年にイタリアのヴィブラム本社を訪問したことがあるんです。そのとき、とても「美しい」工場だと感じました。どの部署も整理整頓が徹底していて。確かなもの作りの大前提とは何かを、目の前で見せられたような気がします。
またスポルティバとの関係性で言えば、ヴィブラムとは一心同体だと感じます。現地のヴィブラムの工場で、製品についてお話しいただいたときのこと。説明の中に、スポルティバの開発メンバーの名前がどんどん出てきました。マテオから依頼されたとか、アランのリクエストが大変だった、とか。とてもアットホームな雰囲気だったんです。
両社は同じイタリアの企業で、距離的にも決して遠くない。世界中のシューズメーカーがヴィブラムのソールを採用していますが、そのアドバンテージを最も享受しているのは、実はスポルティバなのかもしれません。
−− ヴィブラムは、一般的なユーザーからも評価されていると思いますか?
佐藤 実は一般のユーザーの中にも、ソールに詳しい方は多いんです。「コンパウンド(ソールの素材配合)は何ですか?」なんて聞かれることも。自分が楽しむアウトドアのアクティビティに、どんなソールがマッチするのかをよくご存じで、本当に頭が下がります。
長崎 ユーザーの方も、ヴィブラムの黄色いマークを「信頼の証」として認知しています。ヴィブラムは間違いなく、世界一有名なソールだと思います。
−− ありがとうございます。最後に、スポルティバ ジャパンの今後のビジョンを教えてください。
佐藤 まずはスポルティバというブランドを、日本のアウトドアシューズの中でトップの位置に持っていきたい。
そして相反するようですが、“いたずらな成長”はこのブランドに相応しくないと思っています。本国と今までどおりのコミュニケーションをとりながら、適切な形でブランド認知を広げていきたいですね。
本国スポルティバは、4年後の2028年に創業100周年を迎えます。そして私たちスポルティバ ジャパンは、日本用品株式会社の創業から数えて、2051年が100年のアニバーサリー。これからも末長く、良きパートナーであり続けたいと思っています。
スポルティバ ジャパン
1951年、日本用品株式会社創業。東京・秋葉原にアウトドア用品専門店「ニッピン」を開業する。1969年にスポルティバとのパートナーシップがスタート。2013年に関連会社としてスポルティバ ジャパンが設立し、現在は再び日本用品と吸収合併を果たして新しいスタートを切っている。
Text by 加瀬友重
Photo by 前田一樹