世界中のクライマーから絶大な支持を得ているシューズブランド、スポルティバ。今回は登山靴の最新モデルと、パリ五輪のスポーツクライミングにおいて、日本人選手の足元を支えたクライミングシューズを紹介してもらいました。
−− 今シーズン発表された、新しい登山靴があると伺いました。
長崎 スポルティバの登山靴には2つの大きな柱があります。歩行に特化した「エクイリビウム」シリーズと、登攀に特化した「トランゴ」シリーズです。
今回ご紹介する「トランゴ PRO GTX」は、ハードな登攀に対応する「トランゴ」シリーズの一足でありながら、歩きやすさと履き心地の良さを同時に実現したシューズなんです。
向かって右が登山靴の最新モデル「トランゴ PRO GTX」。
−− その機能性の秘密はどこにあるのでしょうか。
長崎 ヴィブラムと共同開発したソールユニットにあります。エクイリビウムシリーズに以前から搭載されていた、ヴィブラム「スプリング ラグ テック」という技術を用いたソールシステムを採用。中空のユニットなので軽量化にもつながりました。
また、岩に足を掛ける登攀用シューズはソールの固さも重要です。その固さをキープしたまま、踏み込んだときのクッション性が向上しました。
佐藤 スポルティバは毎シーズン必ず“攻めた”モデルを発表しますが、この「トランゴ PRO GTX」はその最たるものだと思います。
−− 登山靴以外のカテゴリーの注目作も、ぜひ紹介してください。
長崎 こちらはパリ五輪で森秋彩選手が着用したクライミングシューズ「マンダラ」です。2024年SSの製品になります。
クライミングシューズは一般的にはエッジの立ったソールを使用します。ですがこの「マンダラ」は、“ノーエッジ”と呼ばれるソールを採用しているんです。文字通りエッジのない滑らかな形状です。
エッジを取った部分はソールが薄くなります。壁や岩と、内部の足の距離が近くなる。つまり、裸足の感覚に近くなるということなんです。ソールはもちろんヴィブラムの製品です。
左が安楽宙斗選手が着用した「スクワマ」、右がパリ五輪で森秋彩選手が着用した「マンダラ」。
実は森選手はパリ五輪直前に、従来のシューズからこの「マンダラ」に履き替えたんです。より足に合う感じがする、ということで。結果、総合4位というパフォーマンスを発揮してくれました。
佐藤 シューズのサイズにシビアだったり、履き心地にこだわるクライマーさんは多いです。それだけ感覚が鋭いのだと思います。プロではなく一般ユーザーの中にも、同じモデルの色違いで「赤と黄色は、微妙に感覚が違う」という方がいらっしゃいます。
−− パリ五輪で銀メダルを獲得した安楽宙斗選手も、スポルティバのアンバサダーを務めていますね。
佐藤 ええ。ただ安楽選手は、いい意味でシューズに無頓着なんです。安楽選手が使用している「スクワマ」というシューズは、赤と黄色の2色展開。彼はずっと赤を履いてきたんですが、パリ五輪直前のワールドカップで急に黄色に変えました。何となく、黄色の気分だったのかもしれません(笑)。
アスリートによってシューズに対する感覚がまったく違うのも、面白いところですね。
スポルティバ ジャパン
1951年、日本用品株式会社創業。東京・秋葉原にアウトドア用品専門店「ニッピン」を開業する。1969年にスポルティバとのパートナーシップがスタート。2013年に関連会社としてスポルティバ ジャパンが設立し、現在は再び日本用品と吸収合併し新しいスタートを切っている。
Text by 加瀬友重
Photo by 前田一樹