「おかっぱり(=岸釣り)」のバスフィッシングにおけるトップアングラーとして、第一線で活躍し続けている川村光大郎さん。インタビューの後半は、川村さんの現在の活動、釣り人としての来歴、そしてルアーメーカーの代表取締役としての、もの作りの哲学について聞きました。
−− 現在の活動の概要について教えてください。
川村 大きく分けてふたつです。ひとつは、プロアングラーとしての活動。そして、ルアーの開発に従事するルアーメーカーとしての業務です。
スポンサーであるダイワのバスプロスタッフとしてはロッドの開発、そのほかウェアやフィッシングギアのアドバイザーやテスターなどに携わっています。
スポンサーであるダイワのバスプロスタッフとしてはロッドの開発、そのほかウェアやフィッシングギアのアドバイザーやテスターなどに携わっています。
−− 今回はヴィブラムを搭載したダイワのフィッシングシューズ、「フォグラー(DS-2301G)」の開発にも関わりました。その印象を聞かせてください。
ダイワ FOGLER GORE-TEX ミッドカット DS-2301G 1
川村 とても楽しかったです。靴作りというのは、プロアングラーやルアーメーカーとはまったく別の業種。「餅は餅屋」というように、これまで靴作りに積極的に関わることはありませんでした。いちカスタマーとして「もっとこういうシューズがあればいいのに」という思いは抱いていましたが。
私が代表を務めるボトムアップは、ルアー製作の会社です。例えばルアーであれば、「ここまではできる、これ以上は無理」というリミットが何となく把握できる。でも靴作りはまったくの門外漢でした。それゆえに共同開発の中ではたくさんの学びがあり、大きな刺激を受けました。
私が代表を務めるボトムアップは、ルアー製作の会社です。例えばルアーであれば、「ここまではできる、これ以上は無理」というリミットが何となく把握できる。でも靴作りはまったくの門外漢でした。それゆえに共同開発の中ではたくさんの学びがあり、大きな刺激を受けました。
−− 前半のインタビューでも伺いましたが、「フォグラー」の出来栄えは素晴らしかったと。
川村 こういうシューズを世に出すことができて、そして自分が関わることができて本当に良かった。ルアーメーカーとしてのもの作りの考え方も同じなんですが、「すでにあるものを作る必要はない」と思っているんです。欲しいものが他社で売っていたら、それを買えばいい。
川村 つまり「今、こういう靴が売れています。だからうちでも作りましょう」という話には乗れない、ということ。より良いもの、何か新しいものを作るのでなければ、一緒にやる意味がないと思っています。
ヴィブラムを搭載したこの「フォグラー」は、現在のバスフィッシングにおいてナンバーワンのモデルだと自信を持って言えます。
ヴィブラムを搭載したこの「フォグラー」は、現在のバスフィッシングにおいてナンバーワンのモデルだと自信を持って言えます。
creative:RYOWAN INC.
photographer:SHIMPEI SUZUKI
−− 川村さんのプロフィールについて、少し遡って伺いたいと思います。バスフィッシングに出会ったのはいつですか?
川村 小学校2年生のときです。歳の離れた従兄弟がバスフィッシングをやっていて。そのルアーやリールなどの道具一式が、すごく格好良くて。
初めてのフィールドは自転車で行ける近所の沼で、従兄弟に連れて行ってもらいました。そこで最初のバスを釣ったんです。リリーパット(スイレンなどの浮草)の横をルアーで引いたら飛び出して、食いついて。その光景は今も鮮明に覚えています。
初めてのフィールドは自転車で行ける近所の沼で、従兄弟に連れて行ってもらいました。そこで最初のバスを釣ったんです。リリーパット(スイレンなどの浮草)の横をルアーで引いたら飛び出して、食いついて。その光景は今も鮮明に覚えています。
−− そのときのルアーも、覚えていますか?
川村 ダイワの「シースネーク」というミノー(小魚を模したルアー)でした。数年前、その従兄弟が「これ、光大郎が初めて釣ったときのミノーだぞ」と言って持ってきてくれたんですよ。当時実際に使ったのは赤色の「シースネーク」。こちらは色違いの同じモデルです。
そんな私がいまやダイワさんのバスプロスタッフを務めているのですから……釣りが導いた縁としか言いようがないですね。
−− その後社会人としてルアーメーカーに就職し、のちにご自身のメーカーを立ち上げました。
川村 ボトムアップという社名には、もの作りの底上げという意味があります。既存の製品よりも良いもの、レベルアップしたものを世に出したいという思いで、自分の会社を設立しました。自社製品についてはもちろん、今回の「フォグラー」のような共同開発のプロジェクトにおいても、同じ思いで取り組んでいます。これから先も自分たちの思いに正直に、より良いもの作りを続けていきたいと考えています。
−− 最後にヴィブラムというソールについて、川村さんが抱いているイメージを教えてください。
川村 プロアングラーとして、またルアーメーカーの人間として、私はルアーを引いたときに、そのわずかな違いを捉えることができます。またルアーを通じて水の中の状況を知覚することもできる。
手の指先と違ってそこまで敏感ではないかもしれませんが、ソールもまた、足元の感覚を伝える重要なツールです。例えば飛び石を歩くとき、釣り人は一歩を踏み出すその瞬間、石の大きさや苔や泥の付き具合、傾斜などを総合的に捉えて「行けるのか、行けないのか」を判断します。
手の指先と違ってそこまで敏感ではないかもしれませんが、ソールもまた、足元の感覚を伝える重要なツールです。例えば飛び石を歩くとき、釣り人は一歩を踏み出すその瞬間、石の大きさや苔や泥の付き具合、傾斜などを総合的に捉えて「行けるのか、行けないのか」を判断します。
creative:RYOWAN INC.
photographer:SHIMPEI SUZUKI
川村 その判断を支える根本的なツールが靴であり、ソールです。ヴィブラムは信頼できる。そしてこれまで釣ってきたフィールドの中で、無意識の状況を含めて、ヴィブラムに助けられてきたシーンは数えきれないほどあるに違いない。そんなふうに思っています。
川村 光大郎プロアングラー/ボトムアップ株式会社代表取締役社長
1979年2月14日生まれ。茨城県阿見町出身。2007年にルアーメーカーに入社。2016年7月に独立し、同年12月にボトムアップ株式会社を設立。ダイワのバスプロスタッフとしても活動。「陸王」(ルアーマガジン)4勝など岸釣り競技で無類の強さを誇る。フィールドで培った感性をルアー開発に注ぎ、メディアやイベントを通じてバスフィシングの魅力を発信している。
Text by 加瀬友重
Photo by 田中駿伍