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INTERVIEW 15
DAIWA
ダイワ

Vol.1フィッシングシューズの進化を支えるヴィブラムの力

May 21, 2024
フィッシングシューズの進化を支えるヴィブラムの力

世界に冠たる釣り具の総合メーカー「DAIWA」。フィッシングシューズの命であるソール開発のパートナーに、ヴィブラムを選んだ理由とは?

フィッシングギアのリーディングカンパニー「DAIWA」。近年はフィッシングシューズの開発にも力を注ぎ、数々のヒット作を世に送り出しています。中でも注目を集めるのが、ヴィブラムと共同開発したソールを搭載したハイスペックモデル。今回はシューズ開発の担当者にヴィブラムとのパートナーシップとものづくりにかける想いをうかがいました。

グローブライド株式会社 フィッシングアパレルマーケティング部 フットウェアMD 山﨑翔平さん
山口県出身。エスペランサ靴学院卒業後、靴作りの道へ。デザイナーズブランドやレディスメーカーで経験を積んだ後、本場の靴作りを学ぶため、イタリアへ留学。その後、グローブライド株式会社へ入社し、DAIWAのフットウェアを手がける。小学生の頃、下関での投げ釣りをきっかけに釣りの魅力に目覚め、現在は東京湾や多摩川でのシーバス釣りにハマっている。

−− まずはDAIWAの歴史を教えてください。

山﨑翔平さん(以下「山﨑」と略す) 1958年に創業したDAIWAの礎を築いたのはリールの開発でした。当初はおもに輸出用のリールを製造していましたが、1965年にスプールが外側に配されたアウトスプール型のスピニングリールを開発します。大量の糸を巻くことができ、かつ回転スピードと巻き上げ能力も向上させたリールは、世界中の釣り人たちに衝撃を与えました。

creative:RYOWAN INC.
photographer:SHIMPEI SUZUKI

−− “リールのDAIWA”といわれるゆえんですね。

山﨑 リールの性能を高めるために、新しい素材の開発にも力を注いできました。1979年には世界にさきがけてカーボングラファイト素材を使ったリールやロッドを発売し、2007年には高密度カーボン素材の「ZAION/ザイオン」を発表しています。
2010年には宇宙工学を駆使したテクノロジーである「マグシールド」を開発。特殊な液体マテリアルである磁性流体による防水・防塵機能に加え、回転スピードを飛躍的に向上させることに成功し、リールの新時代を切り拓きました。

−− 靴作りの歴史も長いのですか?

山﨑 はい。1975年のカタログにはすでにフィッシングシューズが掲載されていますから、半世紀の歴史があります。

−− シューズ開発でヴィブラムとタッグを組んだ経緯を教えてください。

山﨑 「DAIWAの釣り用靴がリールに劣らない信頼性を獲得するには?」という問題を考えた時、辿り着いた答えのひとつがソール...ヴィブラムだったのです。
私はDAIWAに入社する前から、ビスポーク靴やデザイナーズなどさまざまなジャンルの靴作りに携わってきました。靴業界にはさまざまなソールメーカーがありますが、中でもヴィブラムは特別な存在。特にアウトドアシューズの分野で絶対的な評価を獲得しているグリップ力とタフさは、DAIWAのフィッシングシューズにもぜひ取り入れたい強みでした。

ダイワ FOGLER GORE-TEX ミッドカット DS-2301G 1

−− そこで誕生したのが、昨年リリースされた「FOGLER GORE-TEX」ですね。

山﨑 はい。岸からのバス釣りといった主に‟おかっぱり“での使用を想定したシューズです。見どころは“ブランド初”となる2つのスペック。ひとつはヴィブラムの代表的なコンパウンド「Vibram MEGAGRIP」を搭載したソールを共同開発している点、もうひとつがゴアテックスを採用した透湿防水シューズである点です。

−− ソールの共同開発に当たってハードルはありましたか?

山﨑 釣りの際には、濡れた岩場の上やぬかるんだ岸辺を歩くことが少なくありません。アウトドアシーンでも特殊なシチュエーションといえますが、1937年創業という長い歴史を持つヴィブラムは我々のニーズに対応できる豊富なノウハウをお持ちでした。

−− 完成品を試した感想はどうでしたか?

山﨑 安定したグリップ力に驚かされました。不安定な岩場や斜面の岸辺でも、靴底に粘りを感じることができ、また、屈曲性にも優れ、親指でしっかり大地を掴める感覚が印象的でした。
また、ラバーソールはラバーが硬すぎるとクッション性やグリップ力に影響し、かといって柔らかすぎると耐久性が低下してしまいます。その点、「Vibram MEGAGRIP」は硬軟のバランスも絶妙でした。

−− ソールの形状やアウトソールのデザインも独特です。

山﨑 前方が大きく巻き上がった特徴的なソール形状は、ダメージを受けやすいつま先を補強するため。また、アウトソールのスパイクとスパイクの間に泥が挟まると、グリップ力が低下してスリップしやすくなります。そこでこのソールでは、スパイクの間には適度な間隔を設けることで、泥が抜けやすくなるよう工夫しているんです。

−− インソールも特別なものを使用していますね。

山﨑 「Orthlite インソール」です。オープンセル構造による優れた通気性と、従来のウレタンフォームよりもヘタリにくい点が特徴。かかと部分にはホールド感が向上するEVAカップインソールが組み込まれているため、長時間歩いても足が疲れにくい。さらに足と接する面には滑り止め加工を施すことで、内部の足のズレを軽減し、斜めの護岸でも快適な釣りが可能です。

−− もうひとつのDAIWA初であるゴアテックスはどんなものですか?

山﨑 防水透湿素材のゴアテックス・ファブリックを靴の形状に合わせて袋状に加工したものです。このゴアテックスが内側に装着された靴は、足を濡らさず、かつ靴内の蒸れを防いでくれます。

−− ミリタリー風のデザインもこれまでの釣り用シューズと一線を画します。

山﨑 デザインはギアとしての機能美にこだわりました。丈夫なナイロンメッシュのアッパーやサイドにあしらったラバーパーツは、藪漕ぎ(道のない藪の中を枝や笹などをかき分けて進むこと)の際にアッパーを守るため。カラーバリエーションはグレージュとブラックのワントーンカラーと、リミテッドグレーのマルチカラーの3色展開。ブランドロゴも控えめにしました。

−− よく見ると、シューレースではないのですね。

山﨑 はい。普通のシューレースですと、藪漕ぎした際ほどけてしまい、釣りをしていると、それがかなりストレスになります。ですので、このモデルには紐を結ぶ必要がないスピードフィットシステムを採用しました。グローブを装着している際でもスムーズに履くことができるので、釣りには最適です。

ダイワ FOGLER GORE-TEX ミッドカット DS-2301G 2

−− スペックといい、デザインといい、釣り以外のシーンでも履きたくなる一足です。

山﨑 ありがとうございます。実際、このモデルを普段の靴として使ったり、登山に使ったりしているスタッフもいます。現在の取り扱いは釣り用品店のみなのですが、ユーザー層が広がっていくのはうれしいです。

−− フィッシングシューズとしては、少々値は張るものの、売れ行きは順調とのこと。人気の理由をどう考えますか?

山﨑 やはりヴィブラムのソールによる歩きやすさが大きいと思います。どれだけアッパーにハイテク素材を使っても、直接地面に接するソールの性能が低ければ、シューズとしてのパフォーマンスを100%発揮できませんから。釣り具メーカーのさまざまなニーズに完璧に応えていただけたのは、ソール開発の第一人者であるヴィブラムだからこそ。このモデルで深まったパートナーシップは、次の「ウェーディングシューズ WS-2302C」の誕生へと繋がりました。
ダイワ

日本を代表するフィッシングブランド。1958年にDAIWAの前身となる大和精工株式会社が創業し、リール製造を開始。その後、アウトスプール型リールや高純度カーボンといった画期的なギアやテクノロジーを次々と生み出す。2009年に社名をグローブライド株式会社へ変更。近年はアパレルラインの「DAIWA PIER39」や「DAIWA LIFESTYLE」を展開するなど、ファッションシーンでも注目を集める。

Text by 押条良太(押条事務所)
Photo by 前田一樹 *インタビューカット撮影