日本の登山を支えてきた「キャラバン」から誕生したニューカテゴリー「CRV」は登山ができるタウンシューズ。登山靴を街履きにするのではない、発想の転換!
お話を伺った3人。右から佐藤類さん、佐々木晶規さん、松﨑敦郎さん。
−− 「キャラバン」は日本の登山シーンをいち早く支えてきた老舗ブランドだと思っています。登山が好きな方やトレッキングなどをされる方はご存知だと思いますが、まずは「キャラバン」の沿革からお聞かせください。
佐々木晶規さん(以下「佐々木」と略す) 創業者の故・佐藤久一朗氏が1954年に株式会社山晴社を創業し、トレッキングシューズをつくり始めました。それが日本のトレッキングシューズの始まりでもありました。1971年に社名を株式会社キャラバンに変更し、来年の2024年に、創業70周年を迎えます。
−− すごい歴史ですね。このサイトの取材の中でアウトドアをメインにシューズの修理をする「ナカダ商会」に伺ったのですが、そのときも海外のアウトドアシューズの中に混ざってキャラバンのシューズがたくさん修理に出されていて、人気がある日本のブランドだと感じました。
−− そのときから70年ということですか?
巣鴨の「キャラバン」直営店に飾ってある、キャラバンのファーストモデル。
−− 日本の本格的な登山の黎明期の一番面白いところを全部やってしまったのですね。
−− そのときのソールはどんなものだったのですか?
松﨑 現在も弊社のオリジナルソールもありますが、靴の進化の上でヴィブラムの培ってきたノウハウやコンパウンドレシピなどはとてもリスペクトしています。山登りも時代に合わせて変化して、そこに合わせてカスタマイズできるという意味でもお付き合いの幅を広げています。
−− 昔の登山靴は足首のホールドも強く、ソールも硬すぎて街では履けないものでしたが、現在のものは軽量化を含め、靴のホールド感などかなりライトなものでも登山ができるようになっていますよね。
−− 「キャラバン」ブランドを少し教えていただけますか?
−− 「キャラバン」でヴィブラムを使い始めたのはいつごろですか?
−− 80年台のファッション誌で紹介された、アメリカから輸入されたシューズのソールがヴィブラムだったことを考えても早いですね。
−− ついアウトドアというと山登り、キャンプといったことに限定しがちですが、トレッキングシューズのスペックは雨の日や雪の日、寒いときに歩くのにも最適だと思います。ですが、分野別にしてこうした本格的なシューズを街で履く人は多くはいません。メディアの世界ではロケにトレッキングシューズを履いているカメラマンやスタイリストも多いのですが、世の中ではごく一部でしかないと思います。「CRV」はそんな流れの中で生まれたブランドということでしょうか?
「Free」シリーズは全3型。上から時計回りに「Free Trek Hi」「Free Climb」「Free Trek」。
「Free」シリーズのアウトソール。左「Free Climb」、中央「Free Trek」、右「Free Trek Hi」。
−− ドアを開けたらアウトドア、良い言葉ですね。
−− ひと目でアウトドアのブランドであることがわかりますよね。アウトドアとして登山までの最高スペックはなくても、山登りのスペックの中で街を歩くのに最大限のパフォーマンスを発揮することは一目瞭然ですからね。
「Cross」シリーズは全3型。右上は唯一のアークティックグリップA.T.を採用した「Cross Chukka」。下「Cross Way」。左「Cross Gen」。
「Cross」シリーズのアウトソール。三種三様の特徴的なデザイン。左「Cross Gen」中央「Cross Way」右「Cross Chukka」。「Cross Chukka」は「アークティックグリップ オルテライン」を採用している。
佐々木 弊社はランニングを専門にしている靴屋ではなく、山道具関連を専門に扱う山靴屋なのです。長い歴史の中で培ったノウハウをどう街に合わせていくか、多様化する価値観に合わせていくか。そこにアウトドアで使える靴にしていくというのが根底にはあるのです。
−− タウンユースに近くできあがっていますね。
佐々木 「Caravan」や「GRANDKING」はあるけれど、自分たちが他社さんに伺うときに履いていける靴があるか? という問いの結論です。ないからつくったというわけです。
−− 「ないからつくる」というのは先ほどの創業者の精神ですよね。
−− 社内での評判はいかがですか?
松﨑 登山におけるアプローチシューズは普段履きにつくっているのではないですが、ハイスペックだから普段でも履けると思って街で履いている人は多くいます。「CRV」は逆で、街で履けるハイスペックをコンセプトにデザインしています。
−− ヴィブラムとの共同開発があると聞きました。
−− ということは「CRV」は3カテゴリーになるわけですね。
「Vita」シリーズは全2型。右「Vita Amo 」左「Vita Amo GORE-TEX」。
今回ヴィブラムとの共同開発で完成した「Vita」シリーズのソール。
−− 今の話の中で「ゼロドロップ」という言葉がありましたが、それは何ですか?
−− 「ゼロドロップ」は楽なのでしょうか?
佐々木 推進力を得るために靴のつま先が低くなっています。真っ平の靴底だと自分の脚力を使って歩かなければならなりません。失っていた脚力を取り戻すことができるのです。「CRV」は「Create Real Vital」とシューズのボックスにもメッセージとして載せていますが、足は第2の心臓ともいわれています。「Vita」には「目覚めろ、鼓動を感じて」というテーマがあり、歩くことの大切さを感じてほしい。素足の感覚を呼び戻すことで人間本来のバイタルを呼び戻す。ヴィブラムのファイブフィンガーズも素足感を呼び戻すものですよね。
松﨑 「Cross Chukka」の「アークティックグリップオルテライン」を除いて、「CRV」はすべてメガグリップを使用しています。一番オールマイティで、山でグリップ力を発揮しつつ、街では引っかかるほどのグリップでオーバースペックになりすぎないコンパウンドが「CRV」のコンセプトにマッチしています。
佐藤 ヴィブラムにご協力いただき「Vita」も発表ができました。これからもヴィブラムとタッグを組んで、新シリーズを開発できたらと思っています。
「CRV」のカラーバリエーション。ブラック以外にホワイト、カーキ、グレー、ベージュがあります。モデルによって、カラーバリエーションは異なります。
「キャラバン」という伝統を守りながら進化する「CRV」をつくり上げた3人は同年代という強みを活かしたチーム。
会社名は「株式会社キャラバン」。「その一歩を、ささえる。」を企業理念に様々な山に関するカテゴリーをラインナップ。ハイキングシューズをはじめ、登山に必要なアクセサリーなども揃える「Caravan」。山登りのさらなる高みを目指すための靴「GRANDKING」。NEWカテゴリー「CRV」はヴィブラムソールを装備し、コンパウンドやラグパターンも多種多様。多様化する価値観に合わせたプロダクト。また「渓流」は沢登り、釣りなどにおけるシューズ、アクセサリーを展開。各カテゴリーにおいて必要な商品にはヴィブラムソールを積極的に採用している。
Text by 北原 徹
Photo by 北原 徹

