ヴィブラムを一言で表現するなら、私にとっては「革新」。その印象は、ソールではない。靴に起因している。
20年くらい前のことだったと思う。ミカムの会場を歩いていると、知り合いに会った。ミカムは、ミラノで開催される靴見本市だ。
「くみちゃん、それ、どこの靴?」
履いていたブーツが、カッコよかったので、挨拶もそこそこに聞いた。
「これですか、うち、ヴィブラムで作ったんです」。
20年くらい前のことだったと思う。ミカムの会場を歩いていると、知り合いに会った。ミカムは、ミラノで開催される靴見本市だ。
「くみちゃん、それ、どこの靴?」
履いていたブーツが、カッコよかったので、挨拶もそこそこに聞いた。
「これですか、うち、ヴィブラムで作ったんです」。
くみちゃんとは、当時はイタリア本社に勤務していた、ヴィブラムジャパンのマネージャー、眞田くみ子さん。このコラムを書くに当たり、記憶に曖昧な部分があるので取材させていただいた。
モデル名は“Just for me”。2004ー05AWの発表だった。
冒頭画像のモノクロのブーツがそれだが、眞田さんの元でまだ現役。それを実際に履いてくださった。それが、上の画像だ。
私の印象は、カッコいい、スタイリッシュ。そこに可愛さというか、カジュアル感が備わっていることに新しさを感じた。
次にヴィブラムの靴に会ったのは、2010年を過ぎた頃のピッティ・ウォモ。世界的なメンズファッション見本市だが、靴としてブースを構えていた。
モデル名は“Just for me”。2004ー05AWの発表だった。
冒頭画像のモノクロのブーツがそれだが、眞田さんの元でまだ現役。それを実際に履いてくださった。それが、上の画像だ。
私の印象は、カッコいい、スタイリッシュ。そこに可愛さというか、カジュアル感が備わっていることに新しさを感じた。
次にヴィブラムの靴に会ったのは、2010年を過ぎた頃のピッティ・ウォモ。世界的なメンズファッション見本市だが、靴としてブースを構えていた。
そこに展示されていたのは“FUROSHIKI”。布にゴムをプリントする技術との出合いが契機になったそうだが、ベルトを広げると細長い平面となり、ベルトを足に巻いて装着すると立体の靴になる。さまざまな形のものを包める、まさに“風呂敷”だ。
なぜ、ヴィブラムは、このような靴が生み出せるのか。
答えは、ヴィブラムがソール・メーカーだから。ソールから発想し、ソール製造の卓越した技術を持っているからだと思う。
なぜ、ヴィブラムは、このような靴が生み出せるのか。
答えは、ヴィブラムがソール・メーカーだから。ソールから発想し、ソール製造の卓越した技術を持っているからだと思う。
例えば、最新モデルの“One Quarter”。四つに折り畳める靴だ。
ソールを柔らかくすれば、丸めることもできる。しかし柔らかいだけでは、体を支え地面を捕らえるソールとして機能しない。そこで重要となるのが、ヴィブラムの方たちがしばしば口にする“コンパウンド”だと思う。
直訳すると「化合物」となるが、ケーキの生地を思い浮かべてもらうと分かり易いと思う。小麦粉には薄力粉、中力粉、強力粉があり、これを単一で使うか、混ぜるか、また卵やバターを加えるかなど、その配合によって、でき上がりの柔らかさなどが異なる。コンパウンドとは、どんな性能を備えたソールを得たいかによって原材料の配合を凝らしたソール生地のことと言えよう。
ソールを柔らかくすれば、丸めることもできる。しかし柔らかいだけでは、体を支え地面を捕らえるソールとして機能しない。そこで重要となるのが、ヴィブラムの方たちがしばしば口にする“コンパウンド”だと思う。
直訳すると「化合物」となるが、ケーキの生地を思い浮かべてもらうと分かり易いと思う。小麦粉には薄力粉、中力粉、強力粉があり、これを単一で使うか、混ぜるか、また卵やバターを加えるかなど、その配合によって、でき上がりの柔らかさなどが異なる。コンパウンドとは、どんな性能を備えたソールを得たいかによって原材料の配合を凝らしたソール生地のことと言えよう。
また、コンパウンドをソールの形に成型する際の温度や温度を加える時間も仕上がりを左右する。さらに重要なのが意匠。つまり、底面にどんなデザインのパターンを施すか。このパターンは、歩行の体重移動や踏み返し、つまり足の屈曲を左右する。的確な意匠デザインには、人間工学の知識も必要だ。
“One Quarter”には、以上のようなソールのノウハウが詰まっているから、四つに折り畳め、かつ歩ける靴として成立している。
だから「革新」と言いたいのだが、さて、ソールのプロフェッショナル、ヴィブラムは、次にはどのように靴のスタイルを革新してくれるのだろうか。楽しみだ。
“One Quarter”には、以上のようなソールのノウハウが詰まっているから、四つに折り畳め、かつ歩ける靴として成立している。
だから「革新」と言いたいのだが、さて、ソールのプロフェッショナル、ヴィブラムは、次にはどのように靴のスタイルを革新してくれるのだろうか。楽しみだ。
大谷 知子
靴ジャーナリスト
1953年生まれ。靴業界誌を皮切りに靴専門に40年余り。ビジネス、健康などオールラウンドに取材・執筆を続ける。著書に『子供靴はこんなに怖い』(宙出版)『百靴事典』(新版・全靴協連)がある。