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迷ったら、タンク!

モノ・マガジン編集長
前田賢紀
COLUMNOct 3, 2024
迷ったら、タンク!
ソールを張り替えることで、お気に入りの靴を、履き慣れた靴を一新し、ロングライフ化する取り組み「#RepairifYouCare(大切ならリペアしよう)」キャンペーン。ポップアップとして実施されたこのイベントを体験取材した。
持ち込んだのは、20年以上前に購入したカナダ製「ROOTS」のマウンテンブーツ。親指の付け根部分がぱっくり割れたこのブーツに、もういちど命を吹き込んでやろうという魂胆だ。リペア担当は専門工房「RESH.」の榊さんで、雑談を交え相談した結果、これぞヴィブラムソールともいうべきタンクソールと張り替えることに。オリジナルとかなり近いソールパターンであるため、せめて色だけでも刷新すべく、飴色のナチュラルとした。いずれにしろコンサバな選択である。せっかくだから、取材なのだから、と記事映えするソールにする考えも一瞬よぎったが、「よく考えて! これを履いて街を歩くのは君だよ」と、もう一人の自分が囁く。落ち着いた、言い換えれば、代わり映えのしないソールでファイナルアンサーとした。
しかし、しかしだ! これはとても強調したいのだけど、道具なのですよ、靴は。棚のお飾りではないし、展示会に出す作品じゃない。普段履きする道具なのだ。僕という男の足を支え、次に踏み出す一歩を躊躇しないソールでなければならない。それは私にとってはタンクソール、つまり一択なのだ。
 そんなこんなで無事ROOTSを蘇らせた私の脳天に、ひらり舞い降りる記憶。「あ!」である。数年前に似たような体験をしていたのだ。それはSPINGLEの「SHOES REPAIR」。
基本的に修理(補修)サービスなのだが、ソールを選ぶ視点を取り入れた特長をもつ。そこで私はカンガルーレザーのド定番「SP-110」の新品に、もっとも似合わなそうなソール(笑)を張り替えることを思いついた。これはかなり単純に「誰ともかぶらないスピングルを履きたい」という狙い。そして選んだのがやっぱりタンクソールだったのだ! どうやら私は、自然にタンクソールに手が伸びる習性があるよう。品数豊富な居酒屋なのに、いつも同じ料理を注文してしまうようなものか。

 いや、構うもんか。「迷ったら、タンク!」なのだ。
前田賢紀 モノ・マガジン編集長